科学の困ったウラ事情


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編集部だより
著者からのメッセージ

 科学の進展は世の中で華々しく紹介されている.特に医療や健康面で科学への期待は大きく,新聞には優れた成果が続々発表されている.しかし少し長い時間軸でみてみよう.ヒトゲノムがわかったのに,青色ダイオードがもたらしたような身の回りの変化は何も無い.ガンは相変わらず外科的に治すし,認知症も治療できない.ではニュースで聞く数々の新発見はどうなっているのだろう.
 研究者として肌で感じるのは,商業主義に偏っていく科学界の姿である.日本の政府はお金が無い.大学は自己収入を増やすよう求められ,研究者は「役に立つ」(=カネになる)研究をしろといわれる.そうしたウラ事情により,研究のスタイルや論文の書き方は,いま大きく変化している.しかし,それは世の中にあまり知られていないようだ.
 筆者はそういう困った事情を雑誌『科学』に連載してきた.ようやく1 冊の本にまとめることができたので,読んでもらえば科学の現状がわかると思う.なぜプレスリリースが実態を伴わないのか.なぜ捏造が増えるのか.なぜ研究者は疲弊しているのか.科学に興味を持ってくれる人には,解決策も一緒に考えてもらいたい.
――「はじめに」より


著者紹介

有田正規(ありた まさのり)
1971年生まれ.東京大学理学部情報科学科卒業.同大学院理学系研究科博士後期課程満期退学.理学博士.電子技術総合研究所,産業技術総合研究所生命情報科学研究センター,東京大学大学院新領域創成科学研究科,同理学系研究科を経て,現在は国立遺伝学研究所生命情報研究センター(教授).専門は,生命情報科学(バイオインフォマティクスとメタボロミクス).


目 次

はじめに
Ⅰ 危機に瀕する科学
1 基礎科学はこれでよいのか
2 天職からシゴトになった科学
Ⅱ 科学者というシゴト
3 研究の影に隠れる大学院教育
4 商業化される国際会議――失われゆくソサイエティ
5 研究者のベーシック・インカム
6 研究のマル査
Ⅲ 学術論文という制度
7 学術研究というビジネスの裏側
8 論文数はどれほど重要か――置き去りにされる質
9 知識の1パーセント則
10 ハイエナ学術出版
11 ライブラリ化する大学図書館の未来
12 オープンサイエンスを誰が支えるのか
Ⅳ 不正はなぜ起きるのか
13 不適切なオーサーシップ
14 信用を傷つける「メガホン科学」
15 腐ったリンゴは落ちるか
16 研究不正とその対策
Ⅴ 社会における科学のあり方
17 老後の初心忘るべからず
18 評価経済社会
19 技術化する科学
20 社会のための,個人の科学
おわりに
用語解説




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